「え?こんな基本的なこともできないんですか?今時中学生でも知ってますよ」
新しいソフトの使い方を質問しただけなのに、こんな風に言われて心が折れそうになった経験はありませんか?
私は転職先で、クラウドツールの操作方法がわからず先輩に質問したところ、周囲に聞こえるような大きな声で「IT音痴ですね〜」と笑われました。
その日の夜は、「自分は本当に使えない人間なんだろうか」と落ち込んで眠れませんでした。
でも今振り返ってみると、これは明らかに「テクニカルハラスメント(テクハラ)」でした。
IT知識の有無で人の価値は決まりません。
この記事では、私が実際に経験したIT知識差別の実態と、そこから抜け出すために試した方法をお伝えします。
なぜIT知識の差がこんなにつらい問題になるのか?
ストレスが生じる背景・心理
IT知識でのマウンティングがこれほど辛く感じるのには、深い理由があります。
「できて当然」という無言のプレッシャー
現代の職場では、基本的なパソコン操作ができることが「最低限の常識」として扱われています。
そのため、わからないことがあっても「こんなことも知らないなんて恥ずかしい」と感じてしまい、質問すること自体にハードルを感じます。
私の場合、Excel の関数について質問したいことがあっても、「これくらい自分で調べるべき」と思い込んで、結局わからないまま適当に作業して後でミスが発覚する、という悪循環に陥っていました。
世代や経験による知識格差
デジタルネイティブ世代にとって「当たり前」のことが、そうでない人には「高い壁」として立ちはだかります。
しかし、この感覚の違いを理解せず、「できない人=努力不足」と決めつけられることが多いのです。
学習機会の不平等
新しいツールが導入されても、「使いながら覚えて」「マニュアル見ればわかる」で終わってしまい、体系的に教えてもらう機会がないことが多いです。
職場環境が与える影響
IT知識でのマウンティングが続くと、以下のような深刻な影響が出ます:
自信の喪失と学習意欲の低下
私が最も苦しんだのがこれです。
「どうせ聞いても馬鹿にされる」と思うようになり、新しいことを学ぶこと自体が怖くなってしまいました。
孤立感の増大
IT関連の話題についていけず、チームの輪から取り残される感覚が強くなります。
「自分だけが時代遅れ」という思い込みが、職場での居場所を失わせてしまいます。
業務パフォーマンスの悪化
わからないことを聞けない環境では、間違った方法で作業を続けてしまい、結果的に大きなミスにつながることがあります。
私も一度、データの扱い方を間違えて、チーム全体に迷惑をかけてしまったことがありました。
IT知識差別がハラスメントになるケース
テクハラとして認識すべき行為
すべてのIT指導がハラスメントというわけではありませんが、以下のような場合は明らかに問題です:
能力否定と人格攻撃
私が経験した中で最も傷ついたのは、「前の会社では何をやってたんですか?」「こんなこともできないなんて、よく今まで働けましたね」という発言でした。
これは明らかに人格否定です。
公開での恥辱
チーム会議で「○○さんはITリテラシーが低いので」と名指しで指摘されたり、他の同僚の前で操作の遅さを笑われたりする行為も、立派なハラスメントです。
教育機会の剥奪
「どうせ覚えられないでしょう」と決めつけて、IT関連の業務から排除したり、研修参加を認めなかったりする行為も問題です。
企業が取るべき対応
企業には、多様なスキルレベルの従業員が働きやすい環境を作る責任があります:
- 段階的なIT教育制度の整備:レベル別の研修プログラム
- 質問しやすい環境作り:メンター制度や匿名質問システム
- テクハラ防止の啓発:IT知識の差による差別防止研修
- 多様性を認める文化醸成:年齢や経験に関係なく学習を支援
私が実際に試した対処法
自分でできる学習環境づくり
基礎知識の段階的習得
まず、恥ずかしがらずに「超基本」から学び直すことにしました。
私が使ったのは以下の方法です:
- YouTube の初心者向け動画:「Excel 超基本」「PowerPoint 初心者」などで検索
- 書籍での体系的学習:「できるシリーズ」などの入門書を購入
- オンライン講座:Udemy やスキルハブなどの有料講座も活用
重要だったのは、「完璧を目指さない」こと。
まずは業務で必要最小限のスキルを身につけることから始めました。
質問の仕方を変える
以前は「これ、どうやるんですか?」という漠然とした質問をしていましたが、以下のように変更しました:
「○○の機能について調べたのですが、△△の部分がよく理解できませんでした。具体的には□□の操作で困っています」
事前に調べた上で、具体的なポイントを絞って質問することで、「ちゃんと努力している人」という印象を与えることができました。
職場でのコミュニケーション改善
味方を見つける
職場には必ず、親切に教えてくれる人がいます。
私の場合、入社半年後にようやく見つけた同期の女性が、とても丁寧に教えてくれました。
その人に「IT関係で困った時に相談させてもらえませんか?」とお願いし、マンツーマンで教えてもらう機会を作りました。
成長をアピールする
少しずつできることが増えてきたら、それを自然にアピールすることも大切です。
「今日、○○の機能を使って資料を作ってみました」「昨日教えていただいたショートカットキー、とても便利ですね」など、学習への前向きな姿勢を見せることで、周囲の見る目も変わってきました。
限界を感じた時の選択肢
人事部への相談
IT知識でのマウンティングが度を越している場合は、人事部への相談も必要です。
私の同僚で、実際に相談して職場環境が改善されたケースがあります。
相談時のポイント:
- 具体的な発言内容と日時を記録しておく
- 業務への影響(ミスの増加、効率の低下など)を数値で示す
- 改善提案も合わせて持参する
転職も視野に入れる
残念ながら、一部の職場では「IT弱者いじめ」が文化として根付いてしまっています。
そのような環境では、個人の努力では限界があります。
転職活動時には、面接で「新しいシステムの導入時には、どのような研修制度がありますか?」と質問し、教育制度が整っているかを確認することをおすすめします。
意外だった発見:IT得意な人の本音
この問題に悩んでいる時、IT部門の先輩と飲み会で話す機会がありました。
その時に聞いた話が、とても印象に残っています。
「実は、IT得意な人ほど、基本的なことを説明するのが苦手なんですよ。自分にとって当たり前すぎて、どこからつまずくのかがわからない。だから結果的に不親切になってしまう」
つまり、マウンティングしているつもりはなくても、説明が下手で結果的にハラスメントのように感じられてしまうケースもあるということです。
この話を聞いてから、「この人は意地悪で言っているのか、それとも単に説明が下手なのか」を見極めるようにしました。
後者の場合は、「もう少し詳しく教えていただけませんか?」と素直に聞き返すと、案外丁寧に教えてくれることも多いです。
まとめ:IT知識は年齢に関係なく身につけられる
職場でのIT知識マウンティングは確かにつらいものです。
でも、それに負けて学習を諦めてしまうのは本当にもったいないことです。
今すぐできること:
- 基本の基本から、恥ずかしがらずに学び直す
- 質問する時は、事前準備をしてから具体的に聞く
- 職場で味方になってくれる人を見つける
私自身、40歳を過ぎてから本格的にITスキルを身につけ始めましたが、1年後には周囲から「随分上達しましたね」と言われるようになりました。
年齢や経験は関係ありません。
大切なのは、「わからないことは恥ずかしくない」「学ぶことに年齢制限はない」ということを忘れずに、前向きに取り組むことです。
IT知識の有無で人の価値は決まりません。
あなたにはあなたの経験と知識があります。新しいスキルを身につけることで、さらに価値ある人材になれるはずです。